美術館・博物館などの施設が集まる文化の薫り高い地、東京・上野に位置する国立西洋美術館は、広く西洋美術全般を対象とする唯一の国立美術館です。
収蔵品の中核となっているのは、松方(まつかた)幸次郎(こうじろう)がヨーロッパで蒐集につとめた絵画彫刻(松方コレクション)です。松方は日本の若者がヨーロッパ美術の神髄に触れることが出来る美術館設置を夢み、ロンドン、パリを中心に美術品の蒐集をしていました。
しかし、コレクションは昭和2年の金融恐慌により一部が散逸(さんいつ)。また第2次大戦後、パリにあった作品も敵国財産としてフランス政府に接収されてしまいました。
昭和26年サンフランシスコ条約により、その接収された365点は国立の美術館を設置することを条件に日本に返還され、昭和34年、国立西洋美術館は開館しました。
この数奇な運命をたどった珠玉の名品に加えて、美術愛好家達による寄贈や新たに購入された作品が並ぶ所蔵品の中から、本展では、ロマン主義のドラクロワ、印象派のモネ、ルノワール、後期印象派のゴーガン、フォービスムのヴラマンク、キュビスムのピカソ、レジェなど19世紀から20世紀にかけての近代フランス絵画。
版画においてはフランスで活躍した作家に限らず、スペイン最大の画家であるゴヤ、ノルウェーの国民的な画家であるムンクなど。また近代彫刻に革命をもたらしたロダン、20世紀の彫刻の礎を築いたマイヨールなど47作家、全80点を展示します。
ここ井原の地で、国立西洋美術館の所蔵品をまとまった形(油彩40点・版画36点・彫刻4点)で鑑賞することのできるまたとないこの機会に、西洋美術の神髄を、ぜひご堪能ください。