19世紀フランス写実主義の巨匠ギュスターヴ・クールベ(1819-1877)は、当時隆盛していた新古典主義やロマン主義の理想化・空想化された表現とは逆に、農民や労働者などを積極的にモチーフとし、目に映る現実の社会や自然風景をありのままに描くことを目指しました。1850-51年には庶民の葬送を歴史画として描いた大作《オルナンの埋葬》によりアカデミックなサロンへ挑戦し、1855年にはパリ万国博覧会への《画家のアトリエ》などの出品拒否をうけて「レアリスム(写実主義)宣言」を発表し個展を開くなど、時代の旗手として活躍しました。その客観的な描写と反骨精神は、のちの印象派の画家たちへ大きな影響を与えたといわれています。
クールベが数多く残した英仏海峡や故郷オルナン近郊の風景画は、自然への愛を伝えるものです。本展では、風景画を中心にした初期から晩年に渡る作品に加え、ドーミエほか周辺の作家たちによる版画・写真など約100点により、クールベの生きた時代とその芸術の軌跡を辿ります。