幕末から明治に活躍した木脇啓四郎(きのわきけいしろう)(1817~1899)の業績を、その画業を中心に紹介する展覧会を開催します。啓四郎は薩摩藩城下士の嫡男として生まれ、やがて薩摩藩の文化的な業務に携わるようになります。絵は四条派の税所文豹に学び、その画技を活かして安政期には藩内に残る武具を写しています。明治期には博覧会のための産物調査に従事するとともに、世に知られる『麑海魚譜(げいかいぎょふ)』や『薩隅煙草録』の絵図制作を担当しています。また、磯天神拝殿の格天井の修復など生涯にわたり多彩な活動を行いました。子孫宅から鹿児島大学附属図書館に寄贈された木脇家文書には、絵画の模写から風景画、風俗画、植物図など多様な画稿類が含まれています。これらの中から資料的に価値の高いものを選び出し、彼の経歴と関連づけながら、中島信徴や江口暁帆など交流のあった薩摩の絵師たちの作品もあわせて紹介します。知られざる薩摩藩文化官僚の業績とその意義に触れていただければ幸いです。
なお、本展覧会は鹿児島市立美術館と鹿児島大学附属図書館が共同で行う初の企画です。