安曇野穂高に生まれて、後に現代的で芸術性豊かな独自の漆芸術の世界を創出した髙橋節郎(たかはしせつろう)(1914-2007)。その功績を称えられ、1997年に文化勲章を受章しています。
文化勲章は、学問・芸術など文化の向上や発展に多大な貢献をした人に授与されるもので、長野県出身の芸術家では髙橋節郎のほかにもう一人、油彩画の小山敬三(こやまけいぞう)(1897-1987)が1975年に受章しています。
小山敬三は1897年に現在の長野県小諸市に生まれました。幼少期から絵画に親しみ、19歳の時に川端画学校に通って藤島武二に本格的にデッサンを学びます。その後、小山家と親交のあった島崎藤村の勧めもありパリに留学し、20代の大半をパリで過ごしました。シャルル・ゲランに師事しサロン・ドートンヌ会員にもなり、パリで画家としてデビューします。帰国して日本でも精力的に活動、有島生馬や山下新太郎等と一水会を立ち上げ、日展にも毎年作品を出品するようになります。浅間山や姫路城を描いた一連の油彩画が特に認められ、現代日本の洋画の水準を飛躍的に向上させたとして文化勲章の受章に至りました。受章の年には小諸市に自らの作品を収蔵・展示する美術館を建設し、作品とともに小諸市に寄附しました(現在の小諸市立小山敬三美術館)。1987年に89歳で逝去しますが、その名は我が国の芸術史に深く刻み込まれています。
今展では、日本の芸術の発展に大きな役割を果たした故郷出身の二人の美術家の作品を紹介します。