郷土の写真家、有野永霧(ありのえいむ)をご紹介します。
1941年に尼崎市に生まれた有野は、1964年より中学校教諭の職に就きますが、かねてから独学していた写真の世界を追求すべく岩宮武二に師事し、1974年にフリーの写真家に転身します。
植田正治ら多数の写真家との交流を通して技術を磨き、1978年の初個展を皮切りに1985年にはミュンヘン世界写真シンポジウムに日本人で唯一の招待を受けるなど国際的な評価も高まり、1994年に「空蝉の都市・ヨーロッパ編」で第19回伊奈信男賞を受賞します。
自らの研鑽に励む傍らで後進の指導・育成にも尽力し、尼崎市展の審査員を務めるなど当市における功績も大きく、2002年には尼崎市民芸術賞を受賞します。
「虚実空間」「無名のアースワーク」「日本人景」など有野を代表するシリーズには“都市との対話”“自然との対話”というように、被写体との対話を通して人間や文明の気配を採集することが根源のテーマとして貫かれており、それらを写真で追求・表現し続けています。
本展はアマチュア時代から現在における有野の足跡を約150点のプリントや資料によって顧みる、作家にとって過去最大規模の展覧会となります。
また、会期中には作家本人による講演会や列品解説など、現役作家ならではの充実した関連イベントを多数実施します。作品のみならず、作家との対話も心ゆくまでお楽しみください。