奈良大和路の風物を約半世紀にわたって撮り続けた写真家・入江泰吉は、自身の感性でイメージする心象を大切にして撮影に臨みました。特に万葉の風景がテーマの作品は、今にも万葉びとの声が聞こえてきそうな、また、目の前に現れてきそうな錯覚を起こさせるものであります。万葉の故地に佇んだとき、すっとこころの中に飛び込んでくる情景を作品にしたのです。時代は違えど、入江と万葉びとはこころの中で同じ風景を見ていたのだといえます。
今回は、万葉歌が歌われた情景を入江作品で見ていただくと同時に、万葉研究の第1人者である犬養孝氏の万葉歌朗唱(犬養節)と合わせて、万葉の世界にひたっていただきます。また、最新の万葉研究を基にした解説を村田右富実氏(大阪府立大学教授)に書き下ろしていただきました。
このように、視聴覚を通して万葉の世界を体感することで、テーマである「万葉のこころ」を見つけ、日本人としての「こころの文化」を再発見していただければ幸いです。