児玉画廊|東京では5月26日より6月30日まで児玉画廊コレクションignore your perspective 14「四角と不条理」を下記の通り開催する運びとなりました。シリーズで開催しているこのignore your perspectiveは、レギュラーの個展プログラムとは意識を変えて、画廊の視点から作家や作品を選定し、それぞれの作家の個展で作品を見る時とはまたひと味違った魅力を提示するための展覧会です。今回の展覧会では、貴志真生也、久保ガエタン、杉本圭助、関口正浩、竹村文宏、田中秀和、中村土光、馬場佳那子、盛井咲良、八木修平、和田真由子の11名の作家による近作および最新作による構成となっております。
貴志はブルーシートや木材、発泡スチロールなどのいわゆる建材・資材の類いを使い、シンプルかつ合理的な構造でありながら、見た事のないような立体造形を作り出します。今回は平面的アプローチの見られるタペストリー状の作品や、近作の何ともいえない脱力感のある貴志ならではの立体作品を展示いたします。貴志は7月に国立国際美術館(大阪)で開催される「リアル・ジャパネスク-世界の中の日本現代美術」への新作による出展が決まっております。今年の個展「Madness, Civilisation and I 」でデビューとなった久保は、オカルト視されているような学術、奇説、人物についてリサーチし、それをモチーフにした装置によって擬似的に奇妙な現象を発生させるという作品を制作しています。オーラ/エクトプラズムをテーマにした新作の映像作品を発表致します。杉本は先日まで児玉画廊|京都で開催していた個展「無機の儀礼」での大きな反響を受け、中でも評判の良かったなめし革の小片を整然とパネルに貼り付けた作品、また個展では未発表となったセロファンのコラージュによるシリーズ「dimensions」を発表致します。関口正浩は最近作の「こわばる旗」シリーズから未発表の作品を展示致します。表裏別の色で制作した絵具の膜を折紙のように折り返して作る2色の色彩構成はあくまでシンプルですが関口のこの技法でしか表現し得ないものとなっています。関口は現在東京オペラシティーアートギャラリーで9/2まで開催中のProject Nにおいて初期作品から最新作までを辿る内容で展示されていますので、是非併せてお運び下さい。個展「パーティーナイト・オン・ザ・ロック」で発砲ウレタンなどの化学的な素材でありなから有機的な増殖、生物の発生を思わせる驚異的なインスタレーションを見せた盛井ですが、今回はガラスと樹脂による透明性が美しい繊細さと、細胞がジワジワと分裂していくような表現が同居する過去作を紹介致します。昨年のignore your perspective 12において児玉画廊では初紹介となった竹村は、風景の輪郭線を簡略化したシンプルなドローイングや線描を切り貼りして繋いでいくような平面作品等を制作していますが、今回は、新たな試みとして始めているジオラマティックな平面作品を発表します。絵具を細く伸ばして固形化させたものをまるで都市模型を組み立てるようにしてキャンバス上に立体の町並みを構築していき、衛星写真のようにマクロからミクロへと景観が展開していきます。和田真由子は「建物」をテーマとした新作の立体および平面を発表します。これまでも立体と平面を垣根なく繋ぐような作品を発表してきましたが、今回の新作においても平面性、立体視、構造の何たるかについて深く思惟する作品となっています。和田は貴志同様7月の国立国際美術館(大阪)でのグループショー「リアル・ジャパネスク-世界の中の日本現代美術」への出展、および、10月には兵庫県美術館での「現代絵画-学芸員の眼(仮称)」への出品も決まっており、今後の活躍も大いに期待されます。そして、先日新作展を終えたばかりの田中秀和、八木修平は、個展の好評に甘んじる事なく、早くも次の展開を目論むような野心的な最新作のペインティングを制作、発表致します。加えて、今回児玉画廊初紹介となる馬場佳那子による食品と日用品のモチーフを特徴的な色彩と図形化した形状に置き換え、それを矩形の範囲に収めて描いたパステルのドローイングシリーズは、ざらついた質感のマチエールと構図の絶妙なマッチングが見事な作品です。馬場のような作家の登場は、平面作品においてどちらかといえばペインティング優勢の昨今のアートシーンにおいて、ワークス・オン・ペーパーに取り組む若手アーティストが再びあちらこちらで目立ち始め、新たな潮流が生まれつつあることを大いに予感させます。同じく児玉画廊では初紹介となる中村土光は映像及びインスタレーションを主体とした制作を行っています。ある死者のエピソードをモチーフとした映像インスタレーションを展示します。近年児玉画廊では宮永亮、飯川雄大、升谷絵里香などを始め映像作品にも注力していますが、同様に中村の放つ異彩は注視に値します。
画廊あるいはアートフェアG-Tokyoにおいて、折りに触れ断続的に開催することよって、児玉画廊の人気シリーズとなったこのignore your perspectiveですが、画廊の視点で収蔵庫の中から魅惑的な作品を、という当初のテーマだけに収まらず、いよいよ新たな才能、今後を予感させる作品を何処よりも先んじて紹介するという舞台へと熟してきました。児玉画廊の注目する最新の動向を是非ご覧下さい。