過去30年にわたり模索と発展を続けてきた中国の現代アートは、いま、さらなる変化の時期を迎えています。作家たちは自らの伝統の重要性に気づきはじめ、これまでのポップな様式や政治状況を皮肉った作品で世界中を席巻してきた中国現代アートとは異なる、中国の伝統絵画に基づく新たな表現が見られるようになってきているのです。
本展では、若手を中心に19人の作家による最新の作品約60点で、伝統からの再出発を目指す中国現代アートの新しい潮流を、日本で初めて本格的に紹介します。現代の「山水画」とも言える静かな内省へと誘う作品からは、伝統の中に新たな活力を見出そうとする中国現代アートの「いま」が感じられるでしょう。
タイトルの「渓山静遠」は、中国南宋時代の宮廷画家であった夏珪(かけい)(12世紀)の同名の山水図巻《渓山静遠図》(台北故宮博物院所蔵)に由来します。同図巻の静謐で深遠な絵画世界の精神を、今後の新たな中国現代アートの方向を探るための精神的なより所としたものです。