柏原えつとむは京都在住の美術作家です。1941年に神戸市で生まれ、多摩美術大学で絵画を学び、1960年代後半から現在に至るまで作家としての堅固な歩みを続けています。とりわけ、1960年代の終わりから1970年代にかけて複数の展覧会を通して実現された作品は非常にユニークで、もの派など新しい表現が押し寄せる当時の状況に確かな一石を投じるものでした。小泉博夫・前川欣三と協働した《Mr.Xとは何か?》(1968~69年)、《《展》》(1970~2012年)、《方法のモンロー》(1972~75年)や《未熟な箱たち》(1974~75年)など、作者と作品が切り結ぶ関係に常に注意を払い、それを成立させる芸術の基盤を問い直し続ける柏原の問題意識は、今なお有効な批評性を携えています。複雑な展示構成と規模の大きさの故に展示の機会が限られてきたこれらの代表的作品がまとめて展示されるのは初めてのことです。1970年代を中心とした、知られざる柏原えつとむの世界を目撃するまたとない機会に是非ご期待下さい。