20世紀後半における欧米美術の進展の行き詰まりに続く価値の多様化、1960年代生まれの美術家の仕事の超克、美術情報の氾濫――こうした問題を克服して、真に新しい美術作品を制作することが、1970年以降に日本に生まれた美術家の課題かもしれません。「リアル・ジャパネスク」の出品作家9名は、そうした見極め難い美術状況のもとで、欧米美術の模倣、日本美術への回帰、あるいはショーアップした展示への依存など、近年よく見かける方法とは距離をとっています。この9名の作品は、過去の様々な美術作品や生活の中で経験する物作り等からの柔軟な方法の選択、視覚表現の謎の日本的感性による探求が主な特徴となっています。そして作品が語りかけることに耳を傾ければ、私たちが普段気づいていなかった何かに気づかせてくれ、美術表現としての感動をもたらしてくれるでしょう。巨視的に言えば、直面した美術状況への知的で誠実な対応の結果であるにとどまらず、1970年代・80年代に日本に生まれた者としての子供・学校時代の経験をも作品に結びつけています。その意味で「日本の美術作品として意義あるもの」という明治以降の課題のひとつの解答とも見なせるのではないでしょうか。本展は、日本現代美術の動向を踏まえた上で、そうした作品をふさわしいかたちで位置づけるとともに、今日における美術作品の意義についても考えようとするものです。