19世紀に活躍した博物学者ジョン・グールド(1804-1881)は、イギリスのドーセット湾にあるライム・レギスという小さな漁村に生まれました。幼い頃から自然に親しんだグールドは、20歳の時ロンドン動物学協会附属博物館に勤務しました。1829年に画才を備えたエリザベス・コクスンと結婚し、1832年から妻の協力のもとに鳥類図譜の制作をはじめました。図譜は当時新しい印刷法として開発された石版画(リトグラフ)の技法を利用し、手彩色で着色されています。
グールドが制作したインペリアル・フォリオ判(約56×39cm)の鳥類図譜には、『ヒマラヤ山脈百鳥類図譜』『ヨーロッパ鳥類図譜』『オオハシ科鳥類図譜』『キヌバネドリ科鳥類図譜』『オーストラリア鳥類図譜』『アメリカ産ウズラ類鳥類図譜』『ハチドリ科鳥類図譜』『アジア鳥類図譜』『イギリス鳥類図譜』『ニューギニア及びパプア諸島鳥類図譜』があり、総数は40巻、図版数は2,946点になります。
今回の展示内容はグールドの鳥類図譜を中心に、鳥類の分類や鳥類についての理解を促す解説パネルなどを織り交ぜながら構成いたします。またグールドの資料を多く所蔵するアメリカのカンザス大学ケネス・スペンサー・リサーチ・ライブラリーの協力を得て、図譜の制作方法のコーナーを設け、工程を複製で再現いたします。この展示により、歴史的・文化的遺産として世界に誇る当館のグールド・コレクションの魅力を新たな角度から見ていただければ幸いです。
なお、観覧者にゆったりとした展示空間でグールドの鳥類図譜を堪能していただくため、会期を前期・後期に分けています。皆さまのご来館をお待ちいたしております。