伝統と現代、個と集団、出自と世界、の間(in between)を行き来する
活躍の場を世界に広げる韓国出身のアーティスト、ス・ドホは、異文化との折衝に身を置き、移動やそれに伴うアイデンティティーの変化をテーマに90年代半ばから布を使った建築的作品や、人型を用いた大型のインスタレーションを制作してきました。アジアの手工芸が持つ繊細さと、集合体のパワーが放つダイナミズムを備えた作品は、驚くほど精巧で、感嘆の声が上がるほど大掛かりなものです。本展は「移動と可動建築」、「ひとびとの力」の2部構成で、日本で初公開となる初期作品から近作まで、ス・ドホの活動を広く紹介します。
家族、伝統、民族などの出自を象徴する「家」をモチーフにした代表作では、軽やかな半透明の布や精巧に作られたフィギュアで、移動の時代の記憶、身体性、個人空間の概念などを視覚化します。さらに個と集団の関係性に目を向けるス・ドホは、パーソナルな視点から、文化、歴史、社会というパブリックなものを見つめていきます。日本のサブカルチャーから受けた大きな影響も見いだせるス・ドホの造形世界に本格的に迫る展覧会です。