佐藤辰作(1952~)は、房総の海を見つめ、描き続けている洋画家です。1986年に千葉県東金市に転居した後、1999年より九十九里浜や外房の海辺にくり返し足を運び、季節や天候、時間の移ろいの中で、海のみせるさまざまな表情をとらえた油彩画を制作しています。
佐藤は山形県に生まれ、阿佐ヶ谷美術専門学校で橋本博英に師事し、橋本門下の第一期生として、主に個展、グループ展で作品を発表してきました。油彩画技法を理論とともに学んだ佐藤は、静物、そして故郷山形の広大な山河を題材に、澄んだ色彩、緻密な構成による作品を次々と発表し評価を得ます。近年、アトリエから出て風景を前に描き上げる方法をとり、心打たれた自然の美しさを淡々とキャンバスに再現する画家の個性は、一層深まりをみせています。
このたびの展覧会では、勝浦や太東岬のほか、アトリエにほど近い九十九里浜を描いた近作を展示します。なかでも鴨川の棚田に取材した大作に、本学安房キャンパスが小さく描かれているのは、幸せな偶然といえるでしょう。
身近な自然と真摯に向き合い生み出された作品をとおし、潮風と穏やかな光を感じていただけたら幸いです。