村上華岳は近代日本美術を代表する日本画家です。不思議な美を蔵する華岳の描線は、独自の感情と無限の精神力があります。「制作は密室の祈りなり」と言った華岳の作品には芸術の深淵を垣間見た恐ろしさと厳しさが感じられます。晩年、喘息の苦しみの中でも筆を執り、穏やかで甘美な仏画を描く一方、激しく線が交差する混沌とした作品も残しました。
「何ぞ 必ずしも」と常に定説を疑い、自由な精神を持ち続けたいという願いのもと設立した何必館・京都現代美術館は今年で開館30年を迎えます。当館設立のきっかけとなった村上華岳の作品「太子樹下禅那」は、菩提樹下で座禅修行する若き日の悉多太子(しったたいし)を描いたもので、華岳が描いた数多くの仏画の中で最も高貴な作品です。
本展覧会では、村上華岳の絵画や書などの作品の中から厳選された晩年の作品約40点を展覧いたします。華岳の作品と出会う最上の空間として設計された当館にて、その珠玉の作品を是非ご高覧下さい。