2005年に好評を博した「たむらしげるの世界展」の続編として、前回取り上げることの無かったイラストレーション作品を中心に本展を開催します。たむらしげる氏は幼少期から青年期までを市内片倉町で過ごした八王子ゆかりの作家です。氏の活動はアニメーション、絵本、コミック、イラストレーションなど多岐にわたり、流行に左右されないその作風から世代を問わず、今日多くの人々に親しまれています。
氏の作品は、透明感にあふれ幻想的な印象をどれも持っています。特に青や赤、黄などの鮮やかで均質な色面でつくられた背景、記号といえるほど最低限の線だけでつくられたキャラクターやモノ、余白を十分に考慮した構図などは氏の作品に数多く見られる特徴といえます。加えて、その技法にも独特なものがあります。平面作品では水彩や色鉛筆などの手描きの表現のみならず、インクジェットプリントやリトグラフ、レトラクローム(感光性カラーインクを使用した技法)、写真など多様な技法を用います。また、それらを単体の技法としては用いない作品も多く、例えばインクジェットプリントに手描きの表現を加えるなどデジタル+アナログといった複合的な方法を好んで用いる点も氏の作品の特徴として注目すべきです。
本展ではそうした氏の魅力ある作品とともにその技法にも触れながら活動を紹介。あわせて前回紹介していない絵本作品の原画なども展示しながら、イラストレーター、絵本作家としての「たむらしげるの世界」を十分に堪能できる内容で展観します。