民俗部門では9月2日から、「下駄づくりの職人さん」を第二展示室で開催しています。この展示ではさまざまな種類の下駄を紹介するとともに、下駄が履かれていた頃の写真パネルを展示しています。今では祭りの時など、限られたときにだけ下駄を目にする人がほとんどでしょうが、かつては日常生活の中で普通に使用された履き物でした。
来館者の中には、展示を見ながら下駄にまつわる思い出を語りあう姿も見られます。特に「ドッコ」と呼ばれていた下駄スケートの前では、昔これで遊んだものだとか、馬ソリが通った跡をたどると上手に滑れたなど、面白いお話をたくさん聞くことができました。
また展示では、下駄がつくられていく様子を、その工程ごとに写真パネルと実際に使用された道具で紹介するコーナーもあります。桐の原木を玉切りしてから、木取りをする工程や、歯を作る工程などを「おがみかんな」や「重能ノミ」など下駄づくりの職人に特有の道具がどのように使用されていたのか
の説明とともに紹介します。
この他にも展示の中では、下駄を作る職人が山の神を信仰していたことを示すパネルや、山の神の掛け軸など職人の信仰に係わる部分を紹介するコーナーがあります。
山の神は木びきや桶屋など、木材を扱う職人が信仰の対象とした神で、12月12日に山の神の祭りを行う風習は、広く県内外に分布しています。山の神の多くは女性の神で、大変嫉妬深くて醜い神様だといわれています。そのため女性が山にはいると山の天気を荒れさせたり、自分より醜い顔をしているといって「オコゼ」というグロテスクな顔をした魚を好むなど、山の神が女性神であることに由来する話が多くあります。
今回展示している山の神の掛け軸は男性神が描かれています。県内でも山の神を男性神であるとする地域が何カ所かありますが、その一例といえます。
展示室内には、下駄を履いてみることのできる体験コーナーがあります。男性用・女性用が一足ずつ用意されていますが、大きさが随分違うことに驚く人もいます。子ども達の中には、下駄をはいたことのない人もいて、木の感触を不思議そうに体験する姿を見ることもあります