大場尚文の画業50年を一つの区切りとして、これまでの仕事を回顧する展覧会を開催いたします。
大場尚文は、1941年(昭和16年)上海に生まれ、現在の栗原市で少年時代を過ごした後、岩手大学学芸学部・特設美術科に学びました。
以後、主に宮城、岩手を拠点に活動し、70年代には「モダンアート協会」展や岩手の作家を中心とした「エコール・ド・エヌ」展などに出品。幾何学的抽象とも呼ぶべき作風ながら、レリーフ状に盛り上げた画面を、絵画の平面空間へと転化する逆説的表現には、視覚の曖昧さの奥底に、人間存在の危うさを見据えようとする画家の視線が感じられます。この「内視」にこそ、画家の原点があります。
「描写」への復帰、現実と幻想の平等化、題材選択上の試行錯誤、日本美への覚醒。こういった要素が絡み合って、80年代以降の作風は、激しく振幅を描いて展開しました。彷徨にも似たその様相は、「原点」を周回しつつ、己を定位しようとする営みにほかなりません。本展は、いまだ生成途上にある画家の全体像を、25点の作品によって示そうとするものです。