彫刻の森美術館では、ヴェナンツォ・クロチェッティ(1913~2003)の生誕100年を記念して、「生誕100年記念 ヴェナンツォ・クロチェッティ展」を開催します。最初期から晩年の彫刻と素描33点を展示し、60余年にわたる創作の軌跡を展望します。
クロチェッティは独学で素描の修練に励み、ヴァティカンの美術品修復所で修復家としての修行を積み、彫刻家を志しました。1938年に25歳でヴェネツィア・ビエンナーレ彫刻大賞を受賞。1966年には、15年の歳月をかけて制作したサン・ピエトロ大聖堂のブロンズ門扉《秘蹟の扉》を完成させ、教皇パウロ6世に祝福される栄誉に浴します。制作活動の一方、ヴェネツィア、フィレンツェ、ローマの美術学校の教授を歴任し、日本人を含む多くの後進の育成に尽力しています。
クロチェッティは女性像を中心に肖像や動物像を手掛け、健やかな女性美や湧き上がる動勢、希望や平和といった崇高な精神を表しました。いのちに対して慈愛に満ちたまなざしをそそぐ一方、絶望や苦しみといった精神の暗部をさらけ出し、"人間"への厳しい問いかけも行っています。また、地中海文化や古代ローマ文化、ルネッサンス等、営々と続く自国の歴史的な源流のなかで、その魅力の再発見と新しい解釈をもとに表現してきました。その作品には、高い技術の習得とひたむきな姿勢がうかがわれます。
伝統に根ざしたイタリア彫刻の世界をご堪能ください。