毎日例外なく、同じ道を歩き同じ電車に乗って仕事場に向かう。帰路は時折そのルートを変えてみたりもする。しかしその間の殆どで考え事 ( 内容は大した事ない ) をしているからか、特に変わった光景に出会すこともない。気付いていないだけなのだが・・・。
そんななか、考え事など一瞬にして遮断してしまうほど強烈に目を奪われるものに出会した。母親に抱かれた小さな女の子が持っていた紙片。よく見ると幼児向けの教材であろうか、線で自動車の輪郭だけが印刷されてある。そこにおそらくはその子が、クレパスのようなもので塗りつぶしたのであろう“作品”である。正確にトレースされた綺麗な自動車のかたちなど、お構いなしに元気よく踊るように塗りたくられている。あまりにも自由すぎるその塗りは、小さくとも大きなその子の生身のエネルギーがダイレクトに伝わってきて、思わず感動の笑みがこぼれてしまう。あまり見つめていると不審者と間違われるのでそこそこで視線を変えたが、その余韻は私の制作に新たな解放を与えてくれる。