日本画家・田渕俊夫(1941-)は、日本画の重要な特質である精神性と装飾性を継承し、圧倒的な技術と優れた色彩感覚で、日本画の素晴しさを再認識させる作品を生み出し続けています。その画題は、主に植物と風景ですが、植物を描いた作品からは可憐な姿に隠された生命のたくましさや生命の連鎖に対する畏敬の念を読み取ることができます。また、風景を描いた作品からは、悠久の時間に対する感動を見てとることができます。
このたびの展覧会では、田渕俊夫の45年におよぶ画業を四章に分け、東京藝術大学大学院在学中の作品から最新作まで、約40点の作品により振り返ります。特に最新作は、生命の連鎖とその偉大さを描き続ける田渕が、2011年の東日本大震災を目の当たりにして鎮魂と再生への気持ちをこめ、そして万物の生命の煌(きら)めきに思いを寄せて描いた、横10メートルの大作です。
真摯な写生と卓越した絵画技術に裏づけられた深い精神性に富む田渕芸術の神髄を、どうぞご堪能ください。