日本の近代工芸は時代に即した発展を成し遂げ、国際的な注目も集めてきました。特に近年では、工芸と美術の動向を踏まえながら工芸と個々の造形に対する思考をひたすら深め、現代の造形として革新に意欲を示す作家らが活躍しています。彼らは、現代人の感性によって、工芸の伝統のみならず作品の構造や装飾性、物質性といった特質を再認識し、個別の意識を明快にして独自の表現を見出すべく努めてきました。
友禅や樂焼などの伝統の手法と素材表現に新たな創意を見出して現代的な伝統を築き上げたり、既定の工芸の認識や造形の手法を再構築して新たな可能性を切り拓いたりしています。いずれも、国内外での精力的な制作発表や主要美術館への作品収蔵などをとおして、国際的にも認知されています。その芸術は、素材や表現を異にしながら、日本工芸に清新な造形手法を提示するとともに、新たな座標を構築するものとして広く国際的標準の評価を受けています。
本展では、そうした、現代の日本工芸をリードしてきた作家らと今日もっとも独創的に制作活動を繰り広げている気鋭の作家らとをあわせ、特に国際的にも注目される11人を取り上げました。おのおのの造形思考を豊かに発揮した個性的な作品約90点によって、現代の工芸の美しさと将来の可能性を展望します。