村瀬は、描く対象を少しずつ変えながら絶えず新たな作品世界を切り開いてきました。しかし、それらは特定の着地点に向かうものではありません。一つ一つの作品において、描かれた対象は具象的でありながら、色彩の選択やバランス、またキャンバス上での絵の具の起伏など様々なものが「出口」の無い流動的な場を指し示す要素となり、見る者を多様な解釈へと誘います。今回発表されるドローイング・インスタレーションも、描くこと/描かれたものを通じてこそ見出されるもの―「絵の入り口」への通路の一つとなります。村瀬恭子の最新作をこの機会に是非ご高覧ください。