Thoughts on the Print, Meditations on the between「表面は間である」ことを発見した井田照一は,「僕は垂直と水平のあいだにどのように自分の位置を描けるかということ」を意味づけた作家です。日々展開し続ける作品は1960年代からの現代のアートシーンを駆け抜けた作家の証でもあります。初期の版画作品ではポップアート風なイメージを組み合わせた作品を制作しました。そして,ある時ジョン・ケージにもらったドーバー海峡の石に啓示を受けます。「紙の上に置いていた石を動かすと,長い年月のあいだに紙の上に石の痕跡がうっすらついていた」ことを発見します。“Surface is the Between”をコンセプトにもつ作品制作が始まります。作者は「表現」とは紙の表面に表現されるのではなく,加える力と受ける力の「あいだ」に現れるという,時と空間のなかに誕生する新たな造形論にいたります。その後Garden projectでは既成の紙を土と同化させたカルマを示しました。カルマ(業)は同時にスピリチュアリティ(霊性)のことであり,人間の営みの証が表面に現れてくると考えました。本展覧会では井田照一の展開し続ける作品を通して,日本の戦後美術が時代の中で何を求めていたのか,作家は何故創作活動をするのかを紹介します。