本展は、戦前・戦後の映画の黄金期に、映画ポスター・デザインの第一人者として活躍した野口久光(のぐち・ひさみつ、1909-1994)の世界を、約150点の映画ポスターを中心に、関連のグラフィック・デザインを含めて振り返るものです。
野口は、映画ポスターの第一人者として1,000枚を超えるヨーロッパ映画のポスターを制作しました。ヌーヴェル・ヴァーグの旗手フランソワ・トリュフォーが、野口が描いた「大人は判ってくれない」の日本版ポスターを見て最大級の賛辞を送り、続編の重要な小道具として使用した逸話からも、そのすばらしさがうかがえます。加えてレコード・ジャケットや雑誌、ミステリー本の装丁デザインなど幅広く手掛け、グラフィック・デザインの世界に大きな足跡を残しました。また、映画をはじめ、ジャズ、ミュージカル、舞台評論の第一人者としても知られ、コンサートやミュージカル公演など舞台芸術をプロデュースするなど八面六臂の活躍をしました。
今回の展覧会では、ヨーロッパ名作映画のポスターに加え、ポスター原画、往年の映画俳優を描いたデッサン、本や雑誌、レコード・ジャケットなどを展示し、グラフィック・デザイナーとしての野口の多面的な活動をご紹介します。
なお、ポスターと共に、会場内にて野口自身が編集した戦前のヨーロッパ映画名作集や当時映画館で上映された予告編の展示上映も行います。今も輝きを失わない野口久光のポスターの魅力とグラフィックの世界をお楽しみ下さい。