天然の鉱物(こうぶつ)や土などの粒子からなる「天然顔料(がんりょう)」を「膠(にかわ)」を溶融・接着剤(ようゆう・せっちゃくざい)として、紙や絹に塗る日本画の色には、落ち着いた、深みのある独特の風合いがあります。
そして、青い「群青(ぐんじょう)」、緑の「緑青(ろくしょう)」、赤い「代赭(たいしゃ)」などに代表される「天然岩絵具(いわえのぐ)」や、金銀の「泥、砂子、箔(でい、すなご、はく)」などの持つ、色そのものの美しさと存在感は、平安期のやまと絵、安土・桃山期の障壁画(しょうへきが)のような、装飾的、濃密な画風を生み出し、多くの人々を魅了して来ました。
また、これらと併用される東洋独特の「墨に五彩有り」といわれる「墨」は、それ自体に幅広い色彩のバリエーションを持ち、室町期の水墨画のように、墨一色のみによって、あるいは、多種の色や、赤・青などの限られた色と一体となって、精神性の高い、魅力ある日本画を生み出して来ました。
今回は、色の用法ごとにコーナーを設け、墨を主体とした田近竹邨(たぢかちくそん)、甲斐虎山(かいこざん)の南画作品、群青、緑青等々の天然岩絵具を用いた福田平八郎、高山辰雄の近代日本画作品などを紹介します。