本展は、「手鑑」、「画帖」と呼ばれる、書画を台紙に貼り込んだアルバム形式の作品に焦点をあて、古筆切から文人画まで、さまざまな書画を抱いた手鑑と画帖の豊かな美の世界をご紹介しようとするものです。
聖武天皇や紀貫之といった歴史上の著名な人物による書跡の名品を集めた贅沢な古筆手鑑。専門絵師と能書家とのコラボレーションによって制作され、婚礼などの祝いに際して整えられる豪華な調度の一つとして普及した源氏絵の画帖。小型の本紙にさまざまな主題の絵を描いて貼り込んだ、近世画家の作品集とも言える画譜。著名な画家や名士の手になる作品を集めた蒐集書画帖や、文人らの集いを記念して作られた寄合書の書画帖。これら手鑑と画帖は、作品の制作と蒐集、鑑賞のありようが凝縮された近世文化の小宇宙であり、テーマ性を持つかたちで一つ一つの作品が集まっているという意味では、一種の美術館のような存在でもあります。
この展覧会では、総体としての手鑑・画帖と、それらの中に愛蔵された個々の作品との両面に焦点をあてながら、美術をめぐる近世人の営みを跡付けて行きます。つくり、あつめ、みる歓びに溢れた、「卓上の美術館」とも言うべきアルバムの世界をご堪能いただければ幸いです。