<楽園>とは、およそ「苦しみのない生活を送ることができる場所」をあらわす言葉です。
牧歌的、田園的といったニュアンスに加えて、近代人による建設的な<ユートピア(理想郷)>という意味までも含むようになったのは、世界が<楽園>から次第に遠い現実になっていることによるものでしょうか?
さらに今日では、見出し難いがゆえに、願望することさえ失われつつある場所になってしまったのでしょうか?
古代から私たちは、広い意味での<楽園>を希求してきました。その希求する力によって、人びとはよりよい生活を現実化してきたといえるでしょう。絵画、彫刻、音楽、文学・・それら想像力による産物は<楽園>のモデルを人びとに与え、同時にそうした実りのあるこの世の場所自体が<楽園>でもあったのです。
本展では、横尾忠則の版画『聖シャンバラ』(1974年、10点組)を、さまざまな<楽園>の境界として配置することで、それぞれの<楽園>を発見していただく作品構成を試みています。
シャンバラとは、サンスクリット語を語源とする理想の地底王国の首都、あるいは入口を意味する言葉です。