日本の国技相撲の歴史は古く、はるか古代の神話にまでさかのぼることができます。その相撲が競技として成立し、広く人々に親しまれるようになったのが江戸時代でした。日本全国から腕自慢の力士たちが集まり力を競うその勇壮なさまから、相撲は歌舞伎と並ぶほどの大変な人気を得ていました。美人や歌舞伎役者のように、ブロマイドとして力士の姿が描かれた浮世絵が数多く売り出されたほど江戸の人々は相撲に魅了されていたのです。
相撲錦絵は、似顔絵で表現された勇ましい姿態の力士を画面いっぱいに描き、現代の私たちをも圧倒するほどの迫力を備えています。また、着物をまとった普段の姿や三国志の登場人物に見立てて描かれた姿など、さまざまな工夫を凝らして見る者を飽きさせません。
本展覧会では、相撲錦絵の祖とされる江戸時代の勝川春草の作品から鮮やかな色彩の明治時代の作品まで、大谷孝吉コレクションを中心に日本人に古来より親しまれてきた相撲を描いた浮世絵版画約60点をご紹介いたします。