明治期にフランスで学んだ油彩画を日本に持ち帰り、その後の洋画発展の礎を築いた黒田清輝(1866~1924)以後、鹿児島からは藤島武二(1867~1943)、和田英作(1874~1959)といった名だたる近代洋画の巨匠たちが次々に世に出ました。また、彼らが広めた洋画の流れは、有島生馬(1882~1974)や東郷青児(1897~1978)ら直後の世代にも着実に受け継がれ、日本の洋画壇に彩を添えることになります。
もともと日本のものではない油彩画を学ぶため、あるいは新たな画題を求めて、彼らはヨーロッパを中心に各地で制作を行っていますが、そのようにして異国で描かれた作品には、技術習得にかける熱い情熱や、異国の風物に正面から取り組む緊張感が感じられます。長い画業の一時期を外国で過ごし影響を受けた画家もいれば、現代作家の春田心斉(1923~)のように現地に定住して独自の画境を切り開いた画家もいます。
この展覧会では、鹿児島にゆかりのある作家を中心に、黒田清輝から現代作家に至るまで、異国を描いた画家たちの作品をご紹介します。それぞれの画家の眼を通して描かれた、情緒あふれる異国の風情と多様な表現をお楽しみください。