松山春秋(1909~1993)は、細川藩の絵師3代目松山雪童の孫として熊本市に生まれ、画家になるために19歳で上京。祖父の弟子で帝展委員の日本画家、水上泰生に師事しました。そこで基礎をみっちり学んだのちは、院展をはじめ、新美術人協会展(現在の創画会)、日本画院展などに精力的に出品。入選、入賞を繰り返し、少しずつ画家としての評価を得ていきます。
戦後は、熊本に帰り、水上泰生亡き後は、堅山南風に師事。1957年に日本美術院院友になっています。戦前は人物画と風景を多く描いていますが、帰郷後は、「描けば本当にものが見えてくる」という目で自然を見つめ、阿蘇の根子岳、自宅傍の万日山、周辺の木々、畑の葱坊主、落葉、椎茸、古い板壁など身の周りのものを、まるで「生活歳時記」のように描き続けました。また、油絵も始め、一水会に出品。会員になっています。一方、「南枝塾」を主宰し、熊本に多くの日本画家を育てたことも大きな功績です。
没後19年、本展では日本画のほか油彩、水彩、素描も並べ、松山春秋の画業の一端を紹介します。ぜひ、素朴で温かく、密度のある作品の魅力をご堪能ください。