泉屋博古館コレクションの柱のひとつに近代洋画をあげることができます。この蒐集には、当初、住友家第十五代家長・吉左衞門友純(号・春翠)がかかわることとなりますが、明治30年の米・欧州の外遊によって各国の美術館、博物館などを訪問。文化財保護の重要性、さらに富豪が文化事業のために果たすべき責任を心に秘めたことが与っていると思われます。事実、春翠は、その洋行時に今回出品するクロード・モネの「サン=シメオン農場の道」、「モンソー公園」を購入し、日本にもたらしていますが、これは、わが国への印象派の導入の、最も早い例のひとつとして貴重なことであり、さらに印象派の旗揚げ展(1874年)に前後する作品で、モネの作風変化が認められ、興味深いものともなっています。
本展では、明治初期洋画壇の巨匠、浅井忠の水彩画、その門下の梅原龍三郎、さらに岸田劉生ら京都洋画壇に深く係わった画家や、文部省美術展覧会に出品された藤島武二「幸ある朝」、岡田三郎助「五葉蔦」、山下新太郎「読書の後」、渡辺ふみ子「離れ行く心」、渡辺與平「ネルの着物」など、さらに和田英作「こだま」、梅原「姑娘卿々弾琵琶図」、岸田「麗子六歳之像」、「二人麗子図(童女飾髪図)」、中川紀元「少女」、小磯良平「踊り子二人」、森 芳雄「女性たち」などの女性を描いた作品群を特集展示し、画家の資質の違いを比較鑑賞していただくこととしました。