ドイツ、ベルリンを拠点に活動し注目を集めている作家、塩田千春の展覧会を開催します。塩田はこれまで物や場所に込められた人々の記憶、不在ゆえに強く感じる存在の感覚、日常を送るなかで生まれる不安や恐れといった感情を作品へと展開してきました。自らの内面から生じるこれらの感覚を突き詰めた結果、制作される作品は、作家個人の思いを超えて見る者を強く揺さぶります。
本展では、塩田が近年、新しく取り組んでいる「璧」をテーマにした作品を出品します。日本を離れドイツに住む塩田の経験から、国家や宗教といった個人が属する枠組みは他者や自分自身を理解する助けになると同時に、その人が何者であるかを知るうえで妨げとなるのではないか、私たちはそうした超えられない壁を内在しているのではないか、との思いで制作されたものです。また瀬戸内という当館の立地条件に触発された船を使ったインスタレーションやベルリンの子どもたちに行ったインタビューをもとに制作した映像作品なども発表。自分はどこから来たのか、今どのように存在しているのか、どこへ向かおうとしているのかを問いかけます。