場所 岩手県立美術館屋外展示スペースなど
主催 岩手県立美術館
観覧 無料
講演 2002年2月、辻けい氏によるトークを予定
自然と人の関係を考える。
降りそそぐ日差しや頬を撫ぜる風、肌にまとわる湿気や草木の匂い、あるいは鳥や虫の声。そんな普段あたりまえのように私たちを取りまく環境。でもそこに何か別のものが置かれることで、その場の空気や音、気配を意識することがある。作品に近づいたり触れたり、ときにその内部に入ったりしながら人とアートとの距離が縮まっていく。人とアートがそんなやり取りを交わして行くうちに、アートが発するメッセージを感じとってもらうことはできないだろうか。岩手県立美術館では、世界各地で制作し、その地の自然のなかに作品を布置してきた染織作家の辻けいの仕事を紹介しようと考えた。
彼女は今年の夏に岩手県遠野市を訪れ、自ら繊維を赤く染め織りあげた布を山間を流れる川に放ち、流れにまかせてよじれた布を隣町の東和町の紙漉き工房で和紙に漉き込んだ。
これは岩手県の土地と人々の協力によって出来上がったものである。また9月中旬から、美術館の屋外展示スペースでは辻けいにとっても新しい制作が東和町の職人たちの協力によってすすめられた。彼女はこの土壁の大きな矩形の箱型の作品を「装置」と呼び、真っ赤に塗られた内部に人が入って何かを感じとってほしいと考えている。赤い色は辻けいが近年ずっとかかわりつづけてきた色。
「装置」のある美術館の屋外展示スペースに向かう通路には、先の布を和紙に漉きとった作品と同じタイプの布を彼女が高知県の川に流したときの映像が流されている。
この3つの仕事に共通しているのは赤い色。今回の辻けいの岩手県立美術館での仕事はこの赤がテーマ。赤は光であり、「装置」ではそれが風のように通りすぎて行く。彼女が赤に惹かれるのは、風のような赤い光と辻けいとの関係から生まれた一つの「感情」を大切にしようとしているためかも知れない。