五街道の整備により、人々の往来が盛んになった江戸時代。江戸・京都間を結ぶ東海道と中山道(木曽街道)は旅人たちで賑いました。当時、庶民の旅は遊山(ゆさん)(観光)が認められておらず、寺社参詣などがほとんどでした。とはいえ、人々は物詣(ものもうで)を建前に道中のさまざまな名所・名物を大いに楽しんだことでしょう。同時に街道の宿場に取材した浮世絵も、土産物として江戸で人気を博していきました。
本展では、前期には版元・蔦屋吉蔵(つたやきちぞう)から出された広重の東海道、通称「蔦屋版東海道」を展示し、海・山・川と起伏に富んだ東海道を、雄大な富士山や海の景色とともにめぐります。また併せて諸国の名所を描いた「六十余州名所図会」や渦潮(うずしお)を花と見立て三枚続きの大パノラマで描いた「阿波鳴門(あわなると)之風景」等もご紹介します。後期では、渓斎英泉(けいさいえいせん)と広重が共作し、稀少作「雨の中津川」をはじめ広重の傑作「洗馬(せば)」、「大井」など優品の多い「木曽海道六拾九次之内」全71点をご覧いただきます。
浮世絵でめぐる江戸時代の旅を、ぜひお楽しみください。