アジア諸国の昨今の急激な経済成長は、世界がいまだかつて経験したことのないほど多様な変化をもたらしています。再開発、高層ビルや新築物件の建築ラッシュ、市場の活性化に伴う海外資本の流入によって街の姿は一変し、人々は繁栄の証ともいえる華麗なる都市の変化を謳歌しながら、一方ではその影に潜む諸現象---古き良き時代の光景の喪失、自国文化衰退の危機、経済格差が生み出す貧富の差の拡大、そして環境破壊にも気づいています。また、未曾有の経済的発展が引き起こす世界のパワーバランスの変化により、民族やジェンダーへの関心が高まり、過去や歴史に対する認識の違いや領土をめぐる争いも表面化しています。
私たちのこの世界はいったいどこへ向かおうとしているのか。今一度この問いと向き合い、未来の世界のあり方を考えようという試みである本展は、変動を続けるアジアを出自とし、世界で活躍する7名の作家を取り上げ、ユーモラスでウィットに富んだそれぞれの「世界」の表象を紹介します。現実だけでなく理想をも表象した作品は、希望に満ちた素晴らしき世界へ向かうヒントを与えてくれるでしょう。