平和で幸福な生活が子々孫々まで続くことは、日本人のみならず古くからの万人共通の願いです。人々は幸せを表したり福を招くとされる文字や図柄を、身につけたり飾るなどしてその力を得ようとしてきました。現在でも幸せを願う思いは、成人式や結婚式、端午や七夕などの五節句、さらには神事祭礼など通過儀礼という形で残されています。また、鶴亀や富士などの図柄には、「長寿」や「出世」の意味があり、多くの美術作品のモチーフとしても描かれるようになりました。正月飾りの門松に使用されている松竹梅においても「延命長寿」の意味が込められており、添えられている葉牡丹は「繁栄」を意味し、これらは新年の祝いのシンボルとして日本の文化に定着しています。
本展覧会では、日本人にとって吉祥とされてきた代表的な文字や図柄を様々な分野から紹介するとともに、それぞれの文字や図柄に込められた意味を考えていきたいと思います。新年を迎えるにあたり、いつの時代も変わらぬ人々の「幸福」への思いを再認識していただければ幸いです。