2011年に三重県立美術館は詩情豊かな独自の詩・書・画一体の作品で知られた榊莫山氏の遺志により、作品108点の寄贈を受けました。作品寄贈に感謝するとともに氏の逝去を追悼して、榊莫山氏の芸術を回顧する遺作展を開催いたします。
榊莫山は、1926(大正15)年、現在の三重県伊賀市に生まれ、少年時代から書や絵画に関心を抱きます。第二次大戦後、榊は辻本史邑に師事して書家としての歩みを始め、日本書芸院展、関西綜合美術展、奎星会展などに出品して注目を集めました。しかし、榊は1958(昭和33)年に所属していた団体を脱退して、以後は個展を作品発表の場とします。
榊莫山は、「土」、「女」、「樹」などの漢字一文字を大胆に扱った作品を経て、1970年代後半から自身の詩・書・画による作品を発表します。こうした作品によって、榊は現代の文人と称されて、おおらかでユーモラスな風貌とともに多くの人々から支持されました。
また、榊は書だけではなく、篆刻、絵画、写真なども手がけ、多くの芸術家たちと交流を重ねました。さらに、榊は中国や日本の書史を深く研究し、そうした活動や研究の中で独自の芸術観を確立して、他に例のない0独自の芸術世界を築きました。
今回の展覧会は、三重県立美術館に寄贈された作品108点を中心とする代表作によって莫山芸術の軌跡をたどり、不世出の芸術家榊莫山の全貌を紹介しようとするものです。