19世紀後半から20世紀にかけてのロシアは激動の時代でした。ロシア革命に至るこの時代、優れた文学者や音楽家が登場しましたが、美術の分野で傑出していたのが、写実主義の画家イリヤ・レーピン(1844-1930)です。
レーピンはこの時代のロシアの重要な美術運動である移動派の中心的画家として活躍しました。移動派とは、美術アカデミーに反発したロシア・リアリズムの画家たちが組織したもので、彼らがロシア各地で巡回美術展を主宰したことから移動派と呼ばれています。
革命前後の激動の時代を生きた画家は、《思いがけなく》や《懺悔の前》といった、当時の社会状況を表す作品や、ロシア史に取材した《皇女ソフィア》や《イワン雷帝》などの歴史画、トルストイやムソルグスキーら同時代人の肖像画など、様々なジャンルで傑作を生み出しています。
本展はロシア絵画の殿堂であり、世界最大のレーピンのコレクションを所有する、モスクワのトレチャコフ美術館の所蔵品から、様々なジャンルにおける油彩と素描、合わせて約80点を紹介する、日本で初めての大規模なレーピンの回顧展です。