"現代"美術として表現された作品は、その直後から過去となる。
そして、作り手である我々は皆、常にその反復のなかに身を置いている。
現在は、我々が作品を作り続けること自体困難な社会状況であり、今後それはよリ難しくなって行くと思われる。しかし、この様な状況だからこそ、美術の可能性とその意義を再考し、「なぜつくるのか」という根本的な問いへ立返ることは、我々作り手にとって重要なことではないだろうか。今回、上野の森美術館で「反復」をテーマに展覧会を試みるが、ここで言う「反復」とは、過去にも多く問われてきた言葉のように、差異をあらわにすることを目的とするのでは無い。五感や無意識を持つ身体の、いわば行為における触覚をきっかけに、表現を実現させる手段として機能している。そして作品に関わるイメージや感覚は、それらの行為のなかでよリ具体性を帯び、変化していく。つまり「反復」は、未知なるものを生み出すための思考と行為といえる。
「反復」を意図的に取入れ制作する5人の作家による本展では、それぞれの"行為の触覚"から生まれる"反復の思考"を作品とともに明らかにし、現代における「なぜ」という問いへの答え、その可能性の片鱗を浮かび上がらせることが出来ればと考えている。