17世紀後半ごろ、タバコを粉末状にして香料などを調合したものを鼻孔から直接吸引する嗅ぎたばこの習慣がヨーロッパから中国に伝わると、これを入れて携行できるように蓋に匙が付いた壺が作られるようになりました。掌にすっぽりと納まる程の小さな壺は、持ち主の個性やステイタスを象徴するものとして、玉、瑪瑙、水晶、ガラス、象牙などの高価な素材を用いて、工芸技術の粋を極めた精密な細工が施された独自の世界を生み出してゆくことになります。鼻煙壺とよばれるこうした嗅ぎタバコ入れは、小さいながらもカラフルでバラエティに富んだデザインに魅せられた愛好家たちにより、広く蒐集の対象とされてきました。本展では、沖正一郎氏が20数年をかけて蒐集した鼻煙壺の数々を展示します。一人のコレクターが長年に亘り自らの眼で選定し、手元で愛玩してきた膨大な数に及ぶコレクションの一端をお愉しみください。
また、併せて当館のコレクションより中国美術・工芸の優品を展観いたします。