私たちは日常で写真撮影や録音など「うつす」行為をし、大量生産の製品や紙幣・コインなど「うつされた」ものを使っています。近年では、パソコン上で既成の画像や文字データの一部をコピーして利用することも一般化しています。オリジナリティが重視される美術作品においても、制作の過程でうつしたり、うつされたりする場合があり、そこから新しい表現も生まれています。このたびの展示では様々な「うつし」による美術の創造を、愛知県美術館の所蔵作品でご覧いただきます。
版画では作品とともに、多色刷り木版の版木や銅版画のプレス機も展示し、多様な技法をご紹介します。ブロンズ彫刻とその石膏原型、日本画や油絵の本画と習作・下絵の展示では、微妙に異なる味わいや作者の追求のプロセスをお見比べください。また、過去の作品から一部分や構成などを借りた絵画、人体から直接型どりした立体、同じイメージを写真・絵画・版画・立体等異なる技法・素材・次元に移しかえた作品など、「うつし」による表現の広がりと豊かさに驚かれることでしょう。