地、水、火、風。これに私は仏教徒らしく、仏教における五大の考えに従って、(この世のすべてのものは、地、水、火、風、空の五要素によりなっていると考える)、「空」をつけ加えて、安田侃の作品を見てみたい。地、水、火、風、空の最後の要素、空とは何だろう。それは見ることも捉えることもできないが、確かに存在し、あらゆる存在物をして、そのものたらしめるのに役立っている。それは、「魂」と呼ぶものに近いのかもしれない。魂は形をもたない。しかし、安田の作り出す「形」は、それを見、それに触れる人に、魂の存在を確信させ、その魂を通じて、あらゆる人の心がつながってゆく。
河合隼雄
この文章は、2005年、Kan Yasuda「Basilica di San Francesco Assisi」展より抜粋いたしました。