将軍が公式に臣下の屋敷を訪問する御成の儀式は、大名屋敷における重要な儀礼の一つです。室町将軍家以来、天下人が行った御成は、徳川将軍家にも引き継がれ、諸大名との主従関係を再確認する場として機能しました。特に二代将軍秀忠による尾張徳川家江戸屋敷への御成は、御三家筆頭の威信が見事に示され、その後の規範となるほど盛儀を極めました。
本展では、徳川将軍による御成儀式の様相を明らかにし、将軍饗応に用いられた茶道具の名品をはじめとする美術品の数々を紹介します。特に幕藩体制草創期に盛儀を極めた二代将軍秀忠および三代将軍家光の御成や、体制確立後の五代将軍綱吉による御成、十一代将軍家斉による簡略化された御成など、御成儀式の変容からみる将軍家と大名家との関係を明らかにし、政治・文化両面から徳川将軍家と尾張徳川家にとっての御成の意義について探ります。