このたび笠岡市立竹喬美術館では、笠岡に生まれ大阪で活躍した風俗画家、上島鳳山(1875-1920)の作品を中心に、明治後期から大正時代にかけての大阪の日本画の状況を検証する展覧会を開催します。
鳳山は笠岡の写生派の画家、辻鳳山を祖父として生まれ、大阪の上島くにと結婚したのちは上島鳳山と名乗りました。円山派の木村貫山や渡辺祥益に学び、唐美人や江戸期から明治初期にかけての風俗美人を描き、大正時代の大阪においてその力量と人気は京都の上村松園と並び称される存在であったとも言われます。文展などに出品することもなく、住友家をはじめ大阪の資産家の後援を受けて、自由な制作を進めました。鳳山の描く美人は、やや旧式に倣った印象を受けますが、その姿態表現は、緻密で絢爛な衣装表現や凝った表具の取り合わせとともに、独特な艶やかさを醸し出しています。京都や東京には見られない粘り気のある官能美が感じられます。また狂言や萬歳などを題材とする作品も多く、古典芸能に精通した風俗画も多く手掛けています。近年、東京の泉屋博物館分館で《十二月美人》が公開されるにおよび、次第にその個性的な女性表現が注目されつつあります。
近代の大阪画壇は、この鳳山をはじめ、菅楯彦、岡本大更、生田花朝女、北野恒富、島成園らにより独自な官能性を持つ風俗画の世界を形成しました。その中で鳳山は大正4年に大阪で設立された日本画の展覧会「大正美術会」の参与を務めるなど、大正時代の大阪を彩る重要な存在でした。このたびの展覧会では、これまでほとんど紹介されることのなかった上島鳳山を取り巻く大阪の日本画の素顔を、鳳山作品70点を含む約90点の珠玉により見直します。浪花の地に花開いた個性の豊かさを楽しんでいただければ幸いです。