第4期所蔵品展の特集として、淀井彩子(1943-)の油彩と版画をご紹介します。
淀井彩子は彫刻家・淀井敏夫と画家・茂子(旧姓・高木)の長女として東京に生まれ、東京藝術大学で学びました。
フランス留学中に訪れたエジプトの自然風景に強い印象を受けたことから、1970年から1985年頃までエジプトをテーマに制作します。
1971年に彫刻家・若林奮と結婚。1973年に渡欧する若林に同行してエジプトを再訪し、フランス、スペインの旧石器洞窟を訪れました。
淀井はエジプト以外にも先史、古代美術への関心にもとづいた作品を数多く制作しています。自身が住む武蔵野を顧みることから始まった「武蔵野台地」や自宅近くで見つけた土器片をモチーフに鮮やかな色彩で描いた「土地の名・土地の色・土地の時間」はその代表例です。「土地の名・土地の色・土地の時間」では、特定の対象や場所から離れて自身と空間、時間の関係を鮮やかな色彩によって絵画化しました。「形象・芭蕉」は実家から自宅に移植した芭蕉が世代交代しながら命をつなぐことに心動かされたことから始まったシリーズで、油彩画、素描、水彩、版画と様々な技法を試みています。最新作「地図」は、エジプトの地形を描いた「油彩ドローイング」というべき作品で、自由な筆致が画家の新たな展開を予感させます。
生命感あふれる淀井彩子の作品世界を是非ご覧下さい。