煉瓦造りの建物が立ち並ぶ欧州の古都の風景やそこに生きる人々の姿を、温かく柔らかな作風で描き出した洋画家・佐々木壮六(1936-2000)。何よりも調和を愛し、穏やかな詩的情景を愛したその心のフィルターに濾過され、街も人も使い古された人形も、何処か懐かしく切ない、そして美しい響きを持った形や色彩で新たな生命を吹き込まれました。
このたびの展覧会では1980~1990年代制作の油彩画を中心に構成、200号の大作「ミューズの園」(1983年)の出品も予定されています。
また、浪速八百八橋という言葉がありますが、大阪出身の佐々木は河川や橋に対する思い入れが深く、自身も原風景であると語っています。欧州各地で描かれた数多あるスケッチのなかから、ご遺族のご協力のもとに厳選し併せて展示いたします。
後年茅ヶ崎の隣市である藤沢に居を定め、制作活動に打ち込んでいた佐々木が亡くなったのは64歳になる年のことでした。早過ぎた死が惜しまれますが、後の世に残された数々の作品に満ちる詩的メロディの美しさ、豊かさを、この展覧会でより多くの方々にご紹介出来れば幸いです。是非ご高覧ください。