「21世紀の作家―福岡」は1999年度より当館にて開催されているシリーズ企画展です。福岡市およびその近郊の現代美術シーンにおいて活躍する作家に焦点をあて、個展形式により作家の足跡や問題意識を出来るだけ明確に紹介することを目指しています。
第10回展となる今回は、北九州市在住の鈴木淳の個展を開催します。鈴木は1995年より作家活動を開始、初個展「IE」(旧百三十銀行ギャラリー、北九州市)では家族をテーマに公と私を考察するインスタレーションを発表しました。「IE」のシリーズを1998年まで継続する一方で、1996年に参加した「パラサイトプロジェクト」(北九州市ほか)を皮切りに、街角や建物内にささやかな造形物などを置いたり、パフォーマンスを行うといった、日常に侵入し介入する表現を展開し始めます。2000年には、何気ない日常の風景を切り取ったような映像作品「だけなんなん/ so what?」のシリーズが開始され、現在もなお継続されています。さらに、近年は写真作品にも意欲的に取り組むなど、その表現手法は多岐にわたります。
映像作品のシリーズ名となっている「だけなんなん」とは北九州弁で「だから、どうしたの?」という意味です。鈴木の表現手法は多様に見えますが、このタイトルに象徴されるように、常識をかすかに揺さぶる問いかけが一貫して含まれています。そのどこかユーモアや詩情の漂う表現は、時には哲学的感慨さえも喚起します。
新作を交えた本展では、映像、写真などを組み合わせたインスタレーションが構想されています。「なにもない、ということもない」という少々謎めいたタイトルのもとに繰り広げられる世界をどうぞご堪能下さい。