1949年の映画界入り以来、清潔な魅力と飾らない演技でアイドル的な人気を獲得し、日本映画界に新風を吹き込んだ女優・香川京子。成瀬巳喜男監督の『おかあさん』(1952年)や今井正監督の『ひめゆりの塔』(1953年)でのみずみずしい演技が認められると、小津安二郎・溝口健二・黒澤明・清水宏・内田吐夢といった巨匠たちに次々と起用され、『東京物語』(1953年)や『近松物語』(1954年)、『どん底』(1957年)といった世界映画史に残る傑作での名演は、多くの映画ファンにとって忘れがたいものとなっています。
このように日本映画の戦後黄金期を華やかに飾った大女優であり、いまも現役として映画やテレビドラマへの出演を続ける香川氏は、一方でフィルムセンターの推進する映画保存活動にも多大な尽力をされています。その功績は、この2011年、日本人では初となる国際フィルム・アーカイブ連盟の「FIAF賞」受賞へと結びつきました。
この展覧会では、その60年にわたる輝かしいキャリアを、近年フィルムセンターが香川氏本人より寄贈を受けた写真アルバムや初々しいポートレート、出演作に関わった錚々たる映画人の旧蔵資料などを交えてたどります。11月8日より大ホールで始まる上映企画「映画女優 香川京子」とあわせてお楽しみください。