フランク・ステラ(1936~ )とジム・ダイン(1935~ )は、ともに戦後のアメリカを代表する現代作家です。第二次世界大戦後、アメリカの作家たちはヨーロッパの伝統的な絵画表現から抜け出し、革新的な手法によって自由の国アメリカらしい新しい感覚の美術作品を生み出しました。本展では、明快でクールな色面構成によって絵画の再現性を否定した「ミニマル・アート」と、大量消費社会を背景に身の回りに溢れる既成品を作品のモチーフに取り入れた「ポップ・アート」の作家をご紹介します。
フランク・ステラは、 1960年前後に黒い縞模様の精密な繰り返しが斬新な印象を与える一連の作品を発表しました。色や形といった絵画の要素を、黒の縞模様というこれ以上ないまでに簡略な形に縮小した作品は、「ミニマル・アート」と呼ばれます。本展でご紹介するステラの《ブラック・シリーズI》は、これらの作品を版画化したものです。同じく簡略な色と形の組み合わせによって構成された、版画《シンジェリ・ヴァリエーションズ》とともにご鑑賞ください。
一方、ジム・ダインはミロのヴィーナス像やバスローブといった身近なモチーフを描いた点で、アンディ・ウォーホルに代表されるポップ・アーティストの一員と見なされる作家です。しかし、いわゆる「ポップ・アート」の作品が既製品のイメージの反覆により冷ややかな印象を与えるのに対して、ダインの作品にはモチーフへの愛着が感じられます。また、版画作品の中にも手押しのスタンプを用いるなど、作家の手の痕跡や身体性を感じさせる点が特徴です。
ステラとダインの版画作品から、革新的な戦後アメリカ美術の一端をお楽しみください。