田辺市に生まれた原勝四郎(1886~1964)は、青年期には上京して美術学校に入り、その後第一次大戦下のヨーロッパに渡ってまで熱心に西洋の絵画を学びましたが、帰国して郷里で制作を行うようになってから、特に結婚して隣町の白浜に移り住んで後の1934(昭和9)年頃からは、油彩画とともに墨や水彩絵の具を用いて、掛軸や色紙といった日本画の様式による作品も描くようになります。
原自身はこれを油彩画の制作の傍らに描く余技と考えていたようですが、作品を愛好し求める人も多かったため、戦争の影響で制作が中断するまでのおよそ10年間に亘って描き続けられ、晩年にも再び筆をとっています。
個性的な画技が活かされ、形式に拘泥しない日本画の作品は、原の表現の幅広さを伝えるとともに、人柄までもにじみ出たような温かい親しみのある内容となっています。
今回の小企画展では、これらの作品を集中して取り上げ、その制作の元となった植物スケッチや油彩画も併せて展観し、原の芸術を改めて視野を広げてうかがう機会にしたいと思います。